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2020年3月18日 水曜日

民法(債権関係)改正(6)意思能力、意思表示、行為能力

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法律行為をした場合の主観的(内心や思惑・意図)要素・当事者性についての改正部分になります。

①意思能力制度の明文化
【問題の所在】
意思能力を有しない者がした法律行為について無効となることは、判例及び学説上認められているが、民法に明文の規定はない。
【主な改正内容】
・意思能力を有しない者がした法律行為は無効であることを明文化(新3条の2)
・意思能力を有しなかった者が相手方に対する原状回復義務の範囲は、「現に利益を受けている限度」にとどまる旨の規定を新設(新121条の2第3項)

②錯誤に関する見直し
【問題の所在】
・現行法は「法律行為の要素」に錯誤があることを要件としているが、現行法の文言からはその内容が明確ではない。
・現行法上、錯誤の効果は無効であるが、通常の無効とは異なる解釈をする必要がある(錯誤を理由とする意思表示の無効は、錯誤に陥っていた表意者のみが主張できる)。
・詐欺があった場合に、意思表示の効力を否定することができるのは5年間であるが、無効の場合には期間制限がないため、錯誤と詐欺とのバランスを欠く。
【主な改正の内容】
・錯誤により意思表示の効果が否定される要件を明確化(新95条)
 ①意思表示が錯誤に基づくものであること
 ②錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること
 ③動機の錯誤の場合には、動機となる事情が法律行為の基礎とされていることについて表示されていること
・錯誤の効果を無効から取消しに変更(新95条1項)

③代理人の行為能力
【問題の所在】
・現行法上、制限行為能力者の代理行為は行為能力の制限の規定によって取り消すことができない(現102条)が、制限行為能力者が「他の制限行為能力者」の法定代理人である場合においては、代理行為の取消しができないと「他の制限行為能力者」の保護が図れないおそれがある。
【主な改正の内容】
・制限行為能力者が「他の制限行為能力者」の法定代理人としてした行為については、例外的に、行為能力の制限の規定によって取り消すことができる(新102条ただし書)。

以上

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2020年2月24日 月曜日

民法(債権関係)改正(5)約款

約款とは
大量の同種取引を迅速かつ効率的に行うために作成された定型的な内容の取引条項
をいいます。インターネット取引や、インフラ、多数の会員サービス等で多く用いられています。
【問題の所在】
・民法の原則によれば、契約の当事者は、契約の内容を認識しなければ契約に拘束されないが、約款を用いた取引をする多くの顧客は約款に記載された個別の条項を認識していないのが通常である。
・民法の原則によれば、契約の内容を事後的に変更するには、個別に相手方の承諾を得ることが必要だが、約款を用いた取引では個別の承諾を得られないこともある。
【主な改正の内容】
 定型約款に関する規定を以下のとおり新設
①「定型約款」の定義(新548条の2第1項)
ⅰ 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)において、
ⅱ 契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体
(具体例:鉄道・バスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約など)
②定型約款が契約内容となる要件
・次の場合には、定型約款の個別の条項についても合意したとみなすことを明確化(新548条の2第1項)
ⅰ 定型約款を契約内容とする旨の合意をしたとき
  又は
ⅱ 定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき
・相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容の条項については、合意しなかったものとみなすことを明確化(新548条の2第2項)
③定型約款の変更要件
 次の場合には、定型約款準備者が一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが可能であることを明確化(新548条の4第1項)
ⅰ 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき
  又は
ⅱ 定型約款の変更が、契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき
※定型約款に関しては、反対の意思表示した場合を除き、施行日前の既存の契約についても改正民法が適用されるため、上記要件により契約内容が変更される

以上

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2020年2月19日 水曜日

民法(債権関係)改正(4)債権譲渡

民法(債権関係)改正(4)債権譲渡について
【問題の所在】
債権譲渡による資金調達(特に中小企業における資金調達方法)の活用が期待されているが、
将来発生する債権の譲渡が可能であることが条文上明確でないことや、
譲渡制限特約が付された債権の譲渡は原則として無効であることが円滑な資金調達を行う際の障害になってしまっている。
そこで、
【主な改正の内容】
①将来債権(文字通り、将来発生する予定の債権のこと。)について
将来債権の譲渡が可能であることを明らかにする規定の新設(新466条の6)
②債権譲渡禁止特約について
・譲渡制限特約が付されていても、原則として債権譲渡の効力は妨げられない(新466条2項)=債権譲渡は有効であり、譲受人が債権者となる。
例外として、預貯金債権についての債権譲渡の場合、悪意又は重過失の譲受人その他の第三者との関係では、債権譲渡は無効となる(新466条の5)。
※譲渡人が破産したときは、譲受人は、債務者に債権の全額に相当する金銭を供託するように請求することができる(新466条の3)。

以上

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2020年2月3日 月曜日

民法(債権関係)改正(3)保証人・保証契約

①包括根保証の禁止の対象拡大→想定外の保証債務の履行を求められる事例があり、包括根保証禁止の対象を拡大する必要がある

【問題の所在】
 平成16年民法改正により、貸金等債務に関する包括根保証の禁止が規定されたが、貸金等債務以外の根保証についても、想定外の保証債務の履行を求められる事例があり、包括根保証禁止の対象を拡大する必要がある。
【主な改正の内容】
・極度額の定めの義務付けについては、すべての個人根保証契約に適用(新465条の2)
・保証期間の制限については、現状維持(貸金等債務に限定)(新465条の3)
・特別事情(主債務者の死亡や、保証人の破産・死亡など)がある場合の元本の確定については、すべての個人根保証契約に適用。ただし、主債務者の破産等があっても貸金等債務以外の根保証では元本確定事由とならない点は、現状維持(新465条の4)。

②事業用融資における第三者保証の制限
【問題の所在】
 個人的な情義等から保証人となった者が、想定外の多額の保証債務の履行を求められる事例があり、第三者個人保証を抑制する必要がある。
【主な改正の内容】
 事業用融資の第三者個人保証に関して、保証契約締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証人が保証意思を表示していなければ効力を生じないとの規定を新設(新465条の6~新465条の9)。

③保証契約締結時の情報提供義務
【問題の所在】
 保証人が主債務者の財産状況等を十分に把握せずに保証契約を締結している事例がある。
【主な改正の内容】
 事業上の債務の個人保証に関して主債務者による保証人への情報提供義務の規定を新設(新465条の10)。情報提供義務違反の場合、保証人が主債務者の財産状況等について誤認し、
主債務者が情報を提供しなかったこと等を債権者が知り、又は知ることができたという要件を満たせば、保証人は保証契約を取り消すことができる。

④主債務者の履行に関する情報提供義務
【問題の所在】
 期限の利益を喪失したことを保証人が知っていれば、早期に立替払をして遅延損害金が発生することを防ぐなどの対策をとることも可能であるが、保証人は、主債務者が支払いを遅滞したことを当然には知らない。
【主な改正の内容】
・個人保証一般における期限の利益喪失に関して、債権者の保証人に対する情報提供義務の規定を新設(新458条の3)。情報提供義務違反の場合、債権者は、主債務者が期限の利益を喪失した時からその後に通知を現にするまでに生じた遅延損害金について、保証債務の履行を請求することができない。
・債権者は、保証人(主債務者から委託を受けた保証人に限られる)から請求があったときは、主債務に関する情報を提供しなればならないとの規定を新設(新458条の2)することとなった。

以 上

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2020年1月25日 土曜日

民法(債権関係)改正(2)法定利率

【現行法上の問題点】
・低金利の情勢により、法定利率(年5%)が市中金利を大きく上回る状態が継続
・法定利率を固定すると、将来、市中金利と大きく乖離する事態が再び生ずるおそれ
・市中金利の短期的・微細な変動に連動して頻繁に法定利率が変わると、対応するための社会的コストが大きい
・商行為によって生じた債務を特別扱いする合理的理由に乏しい

【主な改正の内容】
・法定利率を年3%(施行時)に引下げ(新404条2項)
・緩やかな変動性の導入(新404条3項~5項)
変動性の内容は…
・3年ごとに利率を見直す
・見直しにあたっては、貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に直近変動期の指標と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%単位の数値で法定利率が変動
・年6%の商事法定利率(商法514条)の廃止
・中間利息控除(※)にも法定利率(変動性)が適用されることを明文化(新417条の2第1項、722条1項)
  損害賠償請求権が生じた時点(例えば、事故の時点)の法定利率が適用される
(※)中間利息控除とは…
 被害者は、不法行為等による損害賠償によって、将来の逸失利益を含めて請求が可能となるが、被害者が一時金として取得すれば、これを元本として運用した利息分を被害者が利得することになる。
 そこで、不法行為等による損害賠償において被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益をあらかじめ控除する(中間利息の控除)。
 従来、中間利息の控除をする場合の利息の算定は、現404条の法定利率(年5%)によるとされていた(最判平成17年6月14日)。

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2020年1月5日 日曜日

民法(債権関係)改正(1)消滅時効

明けましておめでとうございます。
民法改正がいよいよ施行間近となりましたので概要の解説をしたいと思います。

【民法(債権関係)の一部改正を行った「民法の一部を改正する法律」が、一部の規定を除き、2020年4月1日から施行】
①時効期間と起算点に関する見直し
②人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の時効期間の特則の新設
 不法行為債権に関する長期20年の期間制限の解釈の見直し
③時効の中断・停止事由の見直し

①時効期間と起算点に関する見直し
【現行法上の問題点】
・職業別の短期消滅時効(現170条~174条)は、複雑でわかりにくい
・時効期間の大幅な長期化を避ける必要性があるが、単純な短期間化では、権利を行使できることを全く知らないまま時効期間が経過してしまうおそれ

【主な改正の内容】
・職業別の短期消滅時効はすべて廃止
・商事時効(商法522条)の廃止
・権利を行使することができる時から10年という時効期間は維持しつつ、権利を行使することができることを知った時から5年という時効期間を追加(新166条1項)

⇒改正により、従来の、権利を行使することができる時から10年と、権利を行使することができることを知った時から5年の、いずれか早い期間の経過によって消滅時効が完成することとなる。

②人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の特則の新設
 不法行為債権に関する長期20年の期間制限の解釈の見直し
【現行法上の問題点】
・生命・身体は重要な法益であり、これに関する損害賠償請求権は保護の必要性が高い
・治療が長期間にわたるなどの事情により、被害者にとって迅速な権利行使が困難な場合がある
・不法行為による損害賠償請求権の長期20年の期間制限を除斥期間と解すると、被害者側に不都合となるおそれ
【主な改正の内容】
・人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間について長期化する特則を新設(新167条、724条の2)
 具体的には…
・「知った時から5年」
 →不法行為につき原則である3年から5年に長期化
・「権利を行使することができる時から20年」
 →債務不履行につき原則である10年から20年に長期化
・不法行為債権全般について、長期20年の時効期間制限が時効期間であることを明示(新724条)

⇒改正により、生命又は身体の侵害による損害賠償請求権について、債務不履行による場合と不法行為による場合とで消滅時効期間に差異がなくなった。

③時効の中断・停止の見直し

【現行法上の問題点】
・中断の制度が複雑でわかりにくい
・裁判上の催告に関する判例法理(訴えが取り下げられた場合でも、それまでの間は催告が継続していたと認め、取下げから6か月の間は時効の完成が猶予されているものとする)を明文化すべき
・当事者が裁判所を介さずに紛争の解決に向けて協議をしている場合にも、時効完成の間際になれば、時効の完成を阻止するために訴訟を提起しなければならない
・天災等による時効停止の期間が2週間では短すぎる(現161条)

【主な改正の内容】
・中断事由については、完成猶予事由(時効の完成を猶予する)と、更新事由(新たな時効の進行)とに振り分ける
 具体的には…
 ・承認→更新事由(新152条)
 ・裁判上の請求など→完成猶予事由+更新事由(新147条等)
  ・催告など→完成猶予事由(新150条等)
・停止事由については、完成猶予事由とする(新158条~161条)
・当事者間で、権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録によってされた場合には、時効の完成が猶予されることとする(新151条)
・天災等による時効の完成猶予期間を3か月へ伸長する(新161条)

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2019年10月25日 金曜日

訴訟リスクと応訴負担

訴訟リスクは
厳密には、
①敗訴した場合のリスク、
②敗訴するリスク、
③訴訟を遂行するための負担
に分けられる。

①敗訴した場合のリスクは、不利益な判決によって、経済的または事実上の損失を被る場合である。
②敗訴するリスクは、不利益な判決を被る恐れがあることにより、経済的または事実上の損失または萎縮効果がある場合である。
③訴訟遂行負担は、裁判を継続するための経済的または人的労力的・時間的・名声的負担である。

いずれも、事業・個人にとってはとてつもなく大きな経済的・心理的打撃となるため、
通常業務・取引においてはいずれのリスクも最大限回避するよう経営・行動することが基本的な思考である。

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2019年10月25日 金曜日

契約上の裁判管轄

ビジネス契約書ではほぼ必ず管轄裁判所の定めが規定される。
たいてい、契約書を作成した側の本社所在地の裁判所であるが、
取引関係・内容により、相手方または、東京または大阪地裁、と定められる。
地元の裁判所に定めても控訴審では高等裁判所所在地となるとはいえ、
一審の裁判所が地元かどうかで訴訟リスクが大幅に異なるため、実務上は極めて重要な条項である。

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2019年10月24日 木曜日

国際ビジネス契約書

商品の取引や製造、資本の投下やサービスの提供、昨今ではインターネットサービスなどで、

国際取引契約を見る場面が多くなった。

内容的なチェック項目は、契約書の目的とする取引ごとに異なるが、

一般的な条項は共通する問題がある。

最も基本的なポイントとしては、契約書の正本となる言語はなにか、

英語が多いが、必ずしも英語に限られず、取引企業の存在する国の母国語も多い。

翻訳などで齟齬がある場合や、ニュアンスによって解釈が異なる場合もあるので、十分な注意が必要である。

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2019年10月22日 火曜日

役員の賠償責任の補償制度の導入

会社法改正では、
会社の役員(取締役・監査役等)の個人負担を軽減し、人材を確保するため、役員が業務上の賠償責任を負った場合の弁護士費用や賠償金をその企業が補償できるものとなる。

企業と役員が契約を結ぶことになるが、契約は合っても、明文がなかったため、導入については株主に対して心理的障害があった。

株主からの代表訴訟は極めて重要な監督機能を有するが、萎縮的な経営はかえって株主の不利益となりかねない。
役員が訴訟提起されれば、それだけでも、弁護士費用等のリスクが発生する。

事業にはリスクは付き物であるから、明文化されれば、優秀な役員確保と有効な経営戦略が期待される。

竹村総合法律事務所

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